【ひとりごはん】今日だけは…何を食べてもゼロカロリー
朝の光に、ワタシの朝食が輝いている。
健康診断の帰り道、ちょっと素敵でちょっとお高い、あのパン屋さんで買ったものだ。
若い頃はなーんにも考えなくても、気を付けなくても、オールAだった健診の判定は、いつからか、どんなに気をつけても手の届かない存在になった。
精密検査まではいかない年も、体重と腹囲だけは確実に前年を上回っていく。
毎年、健診の数週間前からはおやつ控えめ、ご飯は少なめに、夕食以降は何も食べないように心がける。さらにお通じのリズムに全集中する。付け焼刃的対策で、体重と腹囲の測定に備えるのだ。
当然、終われば反動が来る。
朝食抜きで、お腹はペコペコ。しばらく体重計には乗らなくていい。薄着になる季節も、もう少し先。
朝昼兼用のブランチということにすればいい。
食べたいもの、食べたいだけ、食べていいでしょ、今日は!
…というわけで、食べたいものを、食べたいだけ、選んだ次第である。
明太バターフランス。
明太子とフランスパンの組み合わせは、見かけると買ってしまう率高し。ちょびヒゲほどの刻みのりが、なかなかどうして、いいアクセントになっている。
フランスパンをガシガシ噛みしめていると、益田ミリさんの“お茶の時間”というコミックエッセイの中の“イチゴの季節”という話を思い出した。
一個3000円の“エクストラスーパーあまおうショートケーキ“をごちそうしてもらうことを肯定するためにあれやこれやと“言い訳”があたまに浮かぶ。「日々老いていくんだから、一番若い今日食べるのがベスト」ということで心を決めたものの、「今日が一番若いから、今日が一番価値あるわたし?明日は今日より劣化した自分?」と心がざらつくミリさん。「どの自分にも同じだけの価値があると思いたい」と心を整理し、3000円のショートケーキに向かうお話だ。
確かに、若いだけが価値あることではない。
だが、この固いパンは。
一番若い今日噛みしめておくのがいいかもな、と思う歯ごたえだった。
明日も噛めるとは限らない…。
卵とツナのクロックムッシュ。
少しカリッとした耳までおいしい。お値段に見合った価値がある美味しさだ。ツナと卵のバランスも完璧。絶妙なハーモニーとはこういうことを言うんだろう。
安く美味しいものが食べられたら嬉しいけれど、主が丹精込めてつくり、目を行き届かせた店で提供されるものには、それなりの料金がかかるのだ…ということが胸に迫ってくる。
昨今の回転ずしチェーンなどでの騒動と重ね合わせると、店側やお客のわたしたちの側にも、時代の流れの中で、何か見落としてきたことがあるのかもしれない。
我が家も食べ盛りの子どもがいるので、外食やテイクアウトの際は“安くて腹応えがある”ことが優先順位の一位になってしまう。
だけど、時々はそうじゃないもの…たとえばこんなおいしいパンを一つだけでも食べさせなければ、という使命感みたいなものがこみ上げてきた。
おなかはいっぱいにならないかもしれないけれど、食べ物と、丹精込めて作ってくれた人への感謝の気持ちと感動が、内なる泉から、きっと湧き上がってくるに違いない。
受付けから注文、会計まですべてが無人化・オンライン化され、働く人が見えにくくなった今の時代に育つ子供たちに、大人が伝え忘れていることがあるような気がした。
そして最後は、フルーツサンド。
特別な“断面映え”を狙わず、味で勝負のパン屋さんの心意気がサンドされている。
パンも、クリームも、フルーツも、それぞれに優しい甘みがあって美味しいのに、お互いが出しゃばらず、一体化している。“パンと、クリームと、フルーツ”ではなくて、“フルーツサンド”なのだ。それぞれが主役級の力を持ちながらまとまるって難しいことだが、難なくやってのけている。これぞプロフェッショナル。後に残るは、爽やかな余韻のみ。
頑張ったあとだから、今日はぜーんぶカロリーゼロ。
気にせず食べると、なおさら美味しい。
以上、いろいろな気付きと学びのあった、健康診断・朝食抜きの日のブランチでした。
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