第6回 【パンとゆで卵のモーニングカフェ】 猫娘の父の日
6回目のメオトカフェ。
今回は買いたいものがあって、こちらのカフェへ。
子供たちに朝ごはんを食べさせておいてから、二人遅めのモーニング。
いつもは「待ち」が発生していることもあるモーニングタイムだが、今日は終了時間間際。もう数回転したと思われる店内は比較的すいており、気楽に過ごせそうだ。
パンと飲み物の他、ゆで卵、たまごペースト、小倉あんが選べるが、遅めの朝食でお腹がペコペコだったので、迷わずゆで卵を選んだ。甘党のオットはアンコと迷った末、腹の虫に負けたか、やはりゆで卵に。
モーニングサービスと言えば、おにぎりや麺類などの和風のものや、地域によっては驚くほどの豪華な内容のものもあり、オールタイムモーニングの店まで存在している。
そんな中で「コーヒーとパンとゆで卵」のトライアングルは、シンプルだが最強だ。
パンにはバター、ゆで卵にはシオだけ。
なのにこんなに揺るぎないモーニングコーヒーのお供が、他にいる(ある)だろうか?
もう助さん・格さんにしか見えない(平成以降の方には見えないのだろう)。
…脱線してしまった。
今日の本題は助さん・格さんではない。
何をするためにここに来たかを忘れてはいけない。
父の日。
2人の父にプレゼントするため、最強トライアングルチケットを買いに来たのだ。
父(母)たちが歩いて行けるこのカフェのコーヒーチケットをプレゼントするのを、毎年の恒例にしている。
でも、顔を見には行かなかった。
チケットを渡すため、オットと子供を遣いに出した。
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父たちのところへ行かなかったのは、端的に言って、好きじゃないからだ。
父たちのことを嫌いなわけではない。
「父の日」とか「母の日」が好きじゃないのだ。
誕生日も含め、父母の日に感謝や愛情を持ち、それを伝える人ってすごいなと思う。
ワタシはこの日が来たからってそんな気になれないし、実際問題大人になって十分自立した今、そんなにお世話にもなっていない。
TVやなんやで、父母の日の宣伝が始まるたび、憂鬱でたまらなくなる。
ああまた今年も来たよ…
考えた挙句、誕生日と父母の日一括で、毎年同じものを送ることにしたのだ。一発化したことで少しは気が楽になったが、それでも憂鬱さは変わらない。
さらに「自分はなんて可愛げのない、悪い娘なんだ」という自己嫌悪がのしかかる。
ああもう父母の日なんて、廃止されればいい。
やりたい人がやればいい儀式じゃないか。
「こどもの日」と違い、カレンダーには記されないこの日。いったい誰の陰謀でこうなったのだ?
いっそ「忘れた」という小ワザを使えばいいのに、それもできない小心者。ワタシは誰の評価を気にしているんだろう…
どんなに父母の日が憂鬱かを熱く語ってしまったが、父母が嫌いなわけでも、生い立ちに問題があったわけでもない。
なのに何でこんなに嫌悪するのだろう?
父母の日に限らず、両親と関わるのが煩わしくて、こちらからは電話もしないしコロナを理由に訪ねてもいない。
ワタシには人間として何か欠陥があるに違いない。そう思うと、両親を避けたら避けたで、結局気が重くなるのだった。
何でだろう、、、
何でだろう、、、?
考えてみると、友人でも同僚でも、親戚・家族でも、ワタシは「狭く、浅く」の付き合いを好み、多くの人と繋がりたいとも、必要以上に深く知りたいともあまり思わない。
それをすれば自分が疲れ切ってしまうことも目に見えている。
突然、頭の中で「ニャー」と猫が鳴いた。
ん?猫?
そうか、猫だ!
猫だったんだ、ワタシ。
いや、そうじゃなくて。
猫みたいなものだ、ワタシ。(生まれてこの方、犬派だけど…)
自由気ままな振る舞い。
群れを好まず単独行動が多い。
束縛されるのは好きでないが、自分がかまってほしい時は寄っていく。
誰にでも簡単に懐いたりしないが、一度心を開いた相手には甘える、などなど。
…当てはまりすぎる。今まで気づかなかったことにビックリだ。
ただのわがままオンナ?
いや、「猫的性格」ということにして欲しい。
両親、特に母を避けるようになったのは祖母が亡くなり、飼い犬がなくなり、孫が大きくなり、人の世話をすることを生きがいとする彼女が役割を失ってからだ。関心が、結婚し、とっくに家を離れたワタシに再び向き始めた。頼んでもいないのに作った料理や買ったものを、来る日も来る日も運んでくる。
ワタシにはそれが「ありがたい」より「重かった」のだ。
ああ、心のつかえがとれた。
「欠陥」じゃなく、「性格」だ。
そう思えばいい。
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「猫娘」は、いろいろ苦労もあるけれど、扱いを心得た飼い主に守られながら、新しい居場所で、自由に生きている。
離れた巣に戻っても来ないし、ニャンニャンと懐いてもこないだろうが、どうか遠くで見守ってほしい。
そちらはそちらで、助け合って、仲良くやってよ。
最強トライアングル・コーヒーチケットだけ、送るからさ。