メオトカフェ

中年倦怠期夫婦の「カフェ道」

第13回 【ガレットとイングリッシュマフィンのモーニングカフェ】 人と人って難しい

息子の試合を観戦できることになった。

コロナ禍での入場制限が立ちはだかり、この数年間なかなか叶わなかったが、このたびようやく入場する権利を得ることができたのだ。

年頃息子の応援に親2人がやってくるなんて、本人には迷惑この上ない話かもしれないが、そんなの関係ない。見たいのだから見せてもらうよ。

どんなに大きくなったって、保育園のお遊戯会を見に行ったあの頃となんら変わりない気分。前夜からカメラとビデオの充電もした。

彼が生まれた時に購入したビデオカメラはもう古く、取り出すのをちょっとためらうような大きさだけど、ワタシ達とともに彼の成長を見守り、記録してきてくれた。きっと出番はもう何度もないだろうけど、引き続き頼むよ。

 

さて、親バカはこのくらいにして…

 

この日は楽しみなことがもう一つ。

昼間の中途半端な時間からの試合なので、その前にモーニングを楽しもうという計算である。

ワタシにとってはメインイベントが一日に2つあるような、ワクワクの1日になる。緊張している息子にこっちのお楽しみの方はバレないようにしながら、数日前から候補の店をリサーチした。移動時間、会場入り時間、カフェの営業時間…段取りは完璧だ。

 

いざ、出陣!!

 

息子を送り出し、こちらはゆっくりめに出発して、お目当てのカフェを目指した。

 

 

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お昼に手が伸びそうな時間なのに、カフェは混んでいた。皆、休日の朝食(ブランチ?)を楽しんでいるのだから、当然時間がかかる。

少し待たねばならない。

さあ、間に合うか…。入場時間に遅れて、試合を見逃しては本末転倒だ。

注文するメニューを先に決めて待っていると、ほどなく名前を呼ばれた。

 

「ここから何分くらいかかる?」

「間に合うかな?」

そんな会話をしていると、ワタシ達のモーニングセットが運ばれてきた。

 

ワタシはガレットのセット。美味しそう。

家で気軽に食べるものでもないし、おそらく“ガレット“が何か知らないであろうオットにも、ささやかな初体験を提供したかったのでこの店を選んだ。

 

ガレットの他、サラダとシリアル入りのヨーグルトがついて、なんとドリンク料金のみである。お値打ちでありがたいが、値上がりが続くこのご時勢、いくらお客さんが入っているとはいえ、これで採算がとれるのかと心配になる。

お客の懐に優しいのは嬉しいサービスだけど、よい店は長く続いて欲しいと思うから。

 

 

オットはイングリッシュマフィンのセット。ベーコンエッグが乗って、こちらも美味しそう。

昔ワタシが何気なく買ってきた、“超熟”のイングリッシュマフィンが大好きになってしまったオット。休日の朝はよく頬張っている。

ガレットやサンドイッチ、トーストの他に、イングリッシュマフィンが選べることも、この店を選んだ理由だ。

 

そう、ワタシはいつもオットのことを考え店を選んでいる。気付いているかな?、オットよ。

そしてオットはいつも、ワタシが選んだ店が遠くても近くても、何も言わず連れてきてくれる。ワタシが喜ぶからだろう。

 

 

相手を喜ばせたいという想いをまだ失っていないことが、ワタシ達夫婦の生命線なのかもしれない。

長く生活を共にしているといろいろと雑になる部分も出てくるが、時々立ち止まって相手のことを考える、相手のために行動する。

そしてワタシ達は、なんとか保たれている。

 

 

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息子のチームは身の丈以上の結果を残し、歓喜したのも束の間、翌日は肩を落として帰ってきた。

 

一番の技量を誇るチームメイトが、「オレがいなければあの成績は残せなかった」と言い切り、紙にビッシリ書かれた自分以外の選手の悪いところを読み上げたそうだ。

「これは悪かったから、次はこうしようとかいう提案じゃなくて、ただみんなの悪いところを責め立てる感じ。いいプレーだっていっぱいあったと思うんだけど」

“彼”が熱さのあまり、仲間にきつい言葉をストレートにぶつけてしまう…ということは今に始まったことではないのだが、息子はそれに慣れることなく、その都度心を痛めていた。

「オレ、そんなつもりで学校入ったわけでも部活してるわけでもないんだよね。どうして仲良くやれないんだろう?」

「全然楽しくない。なんか、人間不信」

 

部活をやるために入る学校ではないし、息子に限らず、大半の生徒は勉強やその他の学校生活と両立できる範囲で活動している。熱量が高い選手が、「仲良く、楽しく」の他のチームメイトに苛立つのも、わからなくはない。

 

子供らしくぶつかり合って折衷案をみつけていけばいいと思うが、息子を含め、誰もそうしようとはしないようだ。監督やキャプテンまでもが沈黙を守り、嵐が過ぎるのを待つ。繰り返し起こる嵐に耐えられない者は、非がないのに去っていく。

なんだか大人の世界みたいだ。

これが現代の若者の人間関係のスタンダード?

 

子供たちがぶつかり合わずに大人になっていくのかと思うと、寂しくもあり、心配でもある。

誰かに本当の気持ち、モヤモヤしている想いを聞いて欲しい、でもこの人に打ち明けても大丈夫だろうか、誰なら信じられる…?

今息子は、そんな荒波の中でもがいている。

アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」が思い浮かぶ)

 

思春期の息子を見守るワタシ達にも、それなりの胆力が必要だ。

 

 

相手のことを想うことが大切だと、背中で語れる夫婦になれるよう、精進します。

そして、君がこころの内をいつでも話せる親でいられるよう…重ねて精進します。

更年期で倦怠期な父と母も、いまだ勉強中なのです。