第19回 【老夫婦が営むカフェ】…have a nice day!
暑い暑い、休日の午後。
出かけた先は観光スポット(のはず)だが、暑さのせいか人気に陰りがあるのか、人はまばらだ。
その一角にある、落ち着いた雰囲気のカフェ&ギャラリーに立ち寄った。
いったい いつからここにカフェスペースがあったのか、ワタシたちは知らない。
「いらっしゃいませ」
声をかけてくれたのは、上品な初老の女性。
「いらっしゃいませ」
次はそのパートナーと思われる、陽気そうな雰囲気をまとった初老の男性。
どうやらお二人で店を営んでいるらしい。
ギャラリーをぐるりと見学して、飲み物を注文した。
しばらくすると、カウンターの中から男性の楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。
コーヒーを淹れているのは間違いなく男性の方だ、と背中を向けていてもわかる。
もし違ったら、この鼻歌はなぜ流れてくるのだ。
運んできてくれたのは女性の方。
見てビックリ。
あのおじいさんが⁈
ラテアート、できるの⁈
ワンコ描いてて鼻唄出ちゃった⁈
しばらくすると、店にいたお客さん(海外からの観光客とみられるファミリー)が、ギャラリーの品を買い求めたいと女性に英語で話しかけた。
女性は英語で対応し、あっという間に商談成立。
このおばあさんが⁈
英語、話せるの⁈
無事、商品を購入したファミリーが店を去るときには
「thank you」
「have a nice day!」
とカウンターの中から男性が声をかけた。
そう、商談中含め、中学生英語で十分な簡単な英語なのだけど、自然にお話しされている…。
義務教育でみんな習った基礎英語。
多くの日本人はなかなか使いこなせていないと思う。
接客の必要(観光客は日本人<外国人)に迫られて、勉強されたのだろうか。
それとも若い頃、何かグローバルな経験が?
ラテアートはいったい誰が?(おじいさんがコーヒーを淹れ、おばあさんがアートを施したということも考えられる…)
ウウム…謎めいている。
だけど考えてみれば、おじいさんとおばあさんが縁側で静かにお茶をすすっている…そんなイメージはワタシが幼少の頃のものが更新されていないだけなのだ。
おじいさんがラテアートしようが、おばあさんが英語を話そうが、そんなに驚くことではないのかもしれない。
時代は変わってゆく。
お店の前はちょうど木陰になって、真夏だというのにまだアジサイが綺麗に咲いている。
なぜだかわからないけれど、現代をしなやかに生きるお二人のカフェに、このアジサイがよくマッチしているような気がした。
お元気で、頑張って欲しい。
have a nice day!
(あ、我がオットの記載を忘れた。彼は始終上の空で、そんな存在感でコーヒーをすすっていたのである…)