【地産地消×異国の味の学校カフェ】 福井県あわら市の「なみまちCAFE」で過ごす夏の日
少子化により2016年、休校となったのだそうだ。
セミが騒がしく鳴き、すぐそこに海がみえる。
この校舎内にカフェがあると知り、訪ねた。
何と言ってもまず心を惹かれたのは、その名前。
なみまちCAFEなんて、素敵。
「学校の校舎を地域の活性化に活かしたい」と願い、住民の方たちで結成された“なみまち倶楽部“により開業されたカフェなのだとか。
「波・街のなみまちかなあ?それとも波・待ちかなあ?」なんて考えながら、校舎内に入った。
ここは紛れもなく、学校で
とってもオシャレなこのカフェスペースは
紛れもなく、教室。
ここで、ランチをいただくことにした。
学校だから、ありがちな昭和の給食風メニューかと思いきや…
いい意味で期待を裏切るラインナップ。
だけど料理は奇をてらったものではなく、波松で収穫される野菜とフルーツが盛り込まれた“波松産の”メニューで、地に足がしっかり着いている。
手作り感も伝わって、とても美味しい。
梨はイチオシの気配…
今回はスイーツは食べられなかったけれど、メニューには“なみまちハロハロ”(波松産のフルーツが入っているらしい)などと書いてある。
他にも“波松和梨ケーキ“とか、“波松産さつまいものフレンチフライ”とか、“波松の塩クジラクッキー”とか、波松、波松、気になるものだらけ…。
梨やメロン、さつまいもやじゃがいもなどが、主役となったりカタチをかえて隠し味となったりして活躍しているのだ。
何回来たら、制覇できるんだ?
まだ帰っていないのに、また来たくなる…
素晴らしいリピート誘導システム。
通りがかったついでに…という立地ではないのだけれど、次々とお客さんが訪れ、「あいにく満席で…」と店員さんが申し訳なさそうに謝っている。
隣のラウンジなる部屋も、夏休みのイベントでもあったのか、親子連れでいっぱい。
このラウンジには、楽器やオセロなどの娯楽品も置いてあるようで、食事中も子供たちの笑い声と木琴の音が聞こえてくる。
これだけ人が来てくれたら、学校も(?)本望だろう。
人のいない学校なんて、寂しいもの。
掲示板には地元の観光案内。
ぶどう、美味しそう。
帰りに寄ってみようかな。
きっと宝物が埋まっているのであろう、タイムカプセル(たぶん)まで素敵。
学校前の坂道を下ると、海。
遊泳するには波が高い気がするけど、釣り人(全国レベルの釣り大会も開催されるのだとか)やサーファーに人気の海岸とのことで納得。
海で遊んだ人たちもカフェを訪れるらしい。
特産物をアピールする。
自然を活かす。
廃校を利用する。
観光案内をする。
それだけなら無いこともない町おこしなんだろうけど、ここはなんだか、少し違う。
なんというか…いろんな人の愛が詰まっているのを感じる場所だった。
ここでしか味わえないもの、感じられないものが、このカフェにはある。
海と田畑だけ、とも言えるこの小さな町の底力を引き出し、田舎町にちょうどイイさじ加減のオシャレさをまとわせながら、閉ざされた学校に再び活気を取り戻したプロデュース力に、びっくりさせられる。
カタチだけじゃない。
お金のためだけじゃない。
自分たちの大好きな町を守りたい!
この町の根っこを紹介したい!
(控えめに自慢したい!)
そして、次世代につなぎたい!
そんな意気込みを感じるまちづくり。
舵を取ったのは、どんな人なんだろう?
気になるなあー
いつかまた来たい、なみまちカフェ。
そしたら今度は、スイーツたくさん食べるぞ!!
町への愛てんこ盛りの、こちらのウェブサイトも素敵。
第20回 【自由時間のカフェ】ここでアリバイを
暑い暑い夏休み。
息子を“オープンキャンパス”なるものに送り届けるため、早朝に家を出た。
進学希望の息子には、田舎の庶民の息子なのだから、身分相応の学費のところしか出せないよ(それだって大変なのだ)、と伝えてある。
それで探し出してきた学び舎は、山々に囲まれたこぢんまりした街の中にあった。この種のところはたぶん概ね、交通アクセスのよくないところにあるのだろう。
どうやっても我が家から公共交通機関を使ったのでは、時間までに到着できないことがわかり、車で送ることになったのだ。
お昼は一緒にそばをすすり…
目的地に着いた。
多くの親子連れが受付に向かい歩いている。
今どき、こうなのだ。
ざっと9割以上の親御さんが参戦されるのだろう。
「みーんな親子連れだけど、一緒に行かなくていいの?」
念のため車の足元には、サンダルでない“ちゃんとした靴”を忍ばせてある。
「いいよ、ひとりで。夕方迎えに来て」
そういって、息子はさっさと車を降り、親子連れの列の中に紛れていった。
これでいいのだ。
だってワタシの進路じゃないもの。
親は学費を工面するだけだ。
…とはいえ、歩いてゆくたくさんの親子連れをみると、一抹の寂しさと心配はあった。
「一緒に来てよ」と言われれば、「え~仕方ないなあ~」とか言いながら、靴を履き替えてホイホイついて行ったに違いない。
後ろ姿を見送りながら「自立、自立」と心で唱えていると
「行かなくていいの?」と隣から声がした。
そう、こうなる予定だったので、この人を用意していたのだ。
「求められてないのに行く必要ないでしょ」
「そりゃそうだ。求められてないもんな」
繰り返す必要がないその部分を繰り返すこの人物は…オットである。
運転要員、兼ワタシのお供要員として要請され、疲れた体にムチ打っての出場だ。
ここは早速。
「よっしゃ、自由時間4時間半!カフェ、行って!」
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せっかくなので、地元産のそば粉を使ったガレットが食べられるお店にやってきた。
中年夫婦にはやや場違いなオシャレすぎる雰囲気…だけど、旅の恥はかき捨て!堂々と佇もう。
ガレットと
クレープ(こちらの粉はフランス産)を。
店員さんが、ランチセットにした方がお得ですよとお勧めしてくださったので、ガレットの方はランチセットにした。
さっき、お蕎麦食べたけど…
こんな無茶をできるのは、オットのおかげ(?)である。
ワタシ一人なら、食べきれなかったら…と思うと注文するのを躊躇してしまうが、オットが一緒なら百人力。
全部、食べてくれる(いいのか、悪いのか)。
おかげでワタシは気にせず食べてみたいものを注文できる。
オットは、ワタシのそばも食べたうえで、ガレットも、クレープも、全部平らげた。
恐るべき二度目のランチタイムをゆっくり楽しみ、さあ残り時間どうしようか?という話になった。
この暑さでは外を歩くのは大変だよね…せっかくだから、サウナのある温泉行っちゃう?と提案すると、ブームが来る前からサウナ―であるオットは、もちろん賛成した。
ということで、自由時間のシメは日帰り温泉となった。
息子よ、母たちは目一杯この地を楽しんだよ、自慢げにそう言ってやろう。
地元のお母さまたちと湯に浸かりながら、そう目論んだ。
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温泉があまりに温まるので、露天に置かれていた“整い椅子”で、少し休む。
露天風呂には小さな子を連れたお母さん。
子連れだと、ゆっくり入れないだろうな…
お風呂くらいゆっくり入りたい!と思っていたあの頃を思い出しながら、風に吹かれているうちに、ふと思った。
「父さん母さんは、大きくなった君に干渉したり、過保護に接したりしない。君がいなくたって、こっちはこっちで楽しくやってるんだから」
ワタシは自分にそう言い聞かせ、子に依存しない親なのよと息子にアピールしようとしているのだ、きっと。
自由時間を楽しんだことを報告するようなふりをして。
この自由時間は、子離れした親を演じるための、アリバイ工作のような時間なのかもしれなかった。
なんだか悔しいから、もう一回温まり直そう。
汗とともに、このモヤモヤは流してしまうしかない。
工作員の運転手を務めたオットは…
きっと今頃男湯で、何も考えず整っているだろう。
第19回 【老夫婦が営むカフェ】…have a nice day!
暑い暑い、休日の午後。
出かけた先は観光スポット(のはず)だが、暑さのせいか人気に陰りがあるのか、人はまばらだ。
その一角にある、落ち着いた雰囲気のカフェ&ギャラリーに立ち寄った。
いったい いつからここにカフェスペースがあったのか、ワタシたちは知らない。
「いらっしゃいませ」
声をかけてくれたのは、上品な初老の女性。
「いらっしゃいませ」
次はそのパートナーと思われる、陽気そうな雰囲気をまとった初老の男性。
どうやらお二人で店を営んでいるらしい。
ギャラリーをぐるりと見学して、飲み物を注文した。
しばらくすると、カウンターの中から男性の楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。
コーヒーを淹れているのは間違いなく男性の方だ、と背中を向けていてもわかる。
もし違ったら、この鼻歌はなぜ流れてくるのだ。
運んできてくれたのは女性の方。
見てビックリ。
あのおじいさんが⁈
ラテアート、できるの⁈
ワンコ描いてて鼻唄出ちゃった⁈
しばらくすると、店にいたお客さん(海外からの観光客とみられるファミリー)が、ギャラリーの品を買い求めたいと女性に英語で話しかけた。
女性は英語で対応し、あっという間に商談成立。
このおばあさんが⁈
英語、話せるの⁈
無事、商品を購入したファミリーが店を去るときには
「thank you」
「have a nice day!」
とカウンターの中から男性が声をかけた。
そう、商談中含め、中学生英語で十分な簡単な英語なのだけど、自然にお話しされている…。
義務教育でみんな習った基礎英語。
多くの日本人はなかなか使いこなせていないと思う。
接客の必要(観光客は日本人<外国人)に迫られて、勉強されたのだろうか。
それとも若い頃、何かグローバルな経験が?
ラテアートはいったい誰が?(おじいさんがコーヒーを淹れ、おばあさんがアートを施したということも考えられる…)
ウウム…謎めいている。
だけど考えてみれば、おじいさんとおばあさんが縁側で静かにお茶をすすっている…そんなイメージはワタシが幼少の頃のものが更新されていないだけなのだ。
おじいさんがラテアートしようが、おばあさんが英語を話そうが、そんなに驚くことではないのかもしれない。
時代は変わってゆく。
お店の前はちょうど木陰になって、真夏だというのにまだアジサイが綺麗に咲いている。
なぜだかわからないけれど、現代をしなやかに生きるお二人のカフェに、このアジサイがよくマッチしているような気がした。
お元気で、頑張って欲しい。
have a nice day!
(あ、我がオットの記載を忘れた。彼は始終上の空で、そんな存在感でコーヒーをすすっていたのである…)
第18回 【ゲストハウスのカフェ】 ヒトの五感で確かめる
自然には絶対通らないだろうな…という場所に、そのカフェはあった。
文明の利器によって、たどり着くことができた。
古民家を改装したゲストハウスだというその大きな家は、玄関が開け放たれているが人の気配はない。
勝手に入っていいのかしら?
「…おじゃましまーす…」
土間で靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、奥へと進んだ。
ソロリソロリと食堂らしきところへ入ると、マスターと思われる人の姿があった。
「カフェ(ですよね?)、いいですか?」
「ああ、どうぞ、どうぞ」
大きな部屋の木材は黒光りしており、改装で大きく窓がとられ、暗さと明るさのバランスが絶妙だ。
先客たちから少し離れた、窓際のカウンター席に座った。
「すみません、今日はお飲み物だけなんですが、よろしいですか?」
マスターがメニューを持ってきてくれた。
本業が忙しくてお菓子、焼けなかったのかな?
理由はわからないけどそのユルさ、今日のコンデションなら受け入れられマス。
最近飲み物よりもサイドメニューに目が行きがちだったのと、夫婦で体重が増加中なことを反省中でもあったのだ。
今日は久々に、飲むだけで。
エスプレッソラテと、ラテマキアートを注文した。
正直、どっちがどっちかわからない2人…。
夫婦二人のカフェ巡りも18回目だというのに、いっこうにコーヒーの知識が向上していない。
でも考えてみると、どちらかがどちらかにウンチクを語ったり、ともに熱心に学ぼうともしなかったから、カフェ巡りを楽しく続けてこられたのかもしれない。
いつ、どの時のコーヒーも、何の前置きもなく、新鮮だ。
カフェはいつも神経を研ぎ澄ませてコーヒーを飲む場所、というわけではないだろう。
ワタシにとっては、目で楽しめて、美味しくて、居心地いい…ただそんな場所なのだ。
お店の内装・雰囲気、窓から見える景色、聞こえる音…そんなものに癒されながら甘く美味しいものをいただく(やはり食べたい)。
話しても話さなくても、本を読んでも居眠りしても、人間観察をしてもただボーっとしても、過ごし方は自由(声が大きいのはお断りだけど)。
そんな時間をつかず離れずの距離感で共有して、そこにコーヒーの香りがしたら、、、最高だ。
先客たちが去っていき、カフェにはワタシ達二人だけになった。
ポツリポツリと会話を交わし、時々コーヒーを啜った。
窓の外を猫が歩いていく。
ワタシ達は検索機能とナビゲーションシステムによって、連れてこられたのかもしれないけれど。
この場所が“肌に馴染む”かどうかを確かめる自由が、ここにある。
【ガーデニング】大失策でジャングル化
“ほったらかしガーデン”のオーナー(ワタシ)、6月になり、ようやく始動。
花の最もよい時期にほったらかすという、信じられない管理体制…
昨春、昨秋の新入生たちも無事冬を越し、
スクスクと成長している様子は遠目に感じていた。
スクスク…。
スクスク?
あれ?
ワサワサすぎやしない?
一株ずつが異様に大きくなっている。
去年までの3倍くらいある…。
ワタシのガーデンが…
ジャングルになっている!
こころあたりは、ある。
冬を迎える前、園芸店で適当に買ってきた土を、適当に撒いた。
3年以上、栄養らしきものを与えていなかったのに。
新入りさんをたくさん迎えたから。
厳しい冬を乗り越えておくれよと、つい、親心で。
土(肥料入り)を撒きまくった…。
皆おそろしい勢いで、飢えを満たしたのだ。
…やってしまった。
半分野生?の楚々としたガーデンが好きだったのに。
大きくなりすぎた彼・彼女らは、自らの場所を確保するため、縄張り争いを始めている。
美しい葉っぱは、大きくなりすぎた隣の葉の下敷きになり、長く伸びすぎた花茎は、隣の花に倒れかかっていた。
これは、いかん。
オーナーの重かった腰は自然と上がり、住人たちの住まいを整えた。
**************
少し風通しのよくなったガーデンを眺め、そうそう、これよねと頷く。
人工の美しさと、自然の美しさは、やはり何かが違う。
置かれた場所で育ち、咲いているものには、どこか凛としたものがあるように見える。
いままでどおり各々のスペースができて、自然の水分・栄養分のもと、皆思い思いに葉茎を伸ばすだろう。
またほったらかすから、元の美しさに戻っておくれ。
手をかけるのは、最小限で。
これまでも、これからも、ほったらかしガーデンの運営方針は変わらない。
(オーナーは明確な方針に基づき、ズボラ運営をしています)
第17回 【おうちカフェ】 ~そんな時もある
月末。
今日行かなければ、今月はカフェ行けないなあ…なんてぼんやり考えていた日曜の朝、
オットが長い間キッチンで何やらしている。
甘い香りが漂い始めた。
匂いに誘われて覗きに行くと、フライパンの中にはフレンチトースト。
「久しぶりだね」
休日の朝食・昼食はオットの担当だが、トーストとか、うどんとか…だいたい炭水化物オンリーの簡単メニューがグルグルまわっている。
フレンチトーストの登場は、1年ぶりくらいか。
子供たちはまだ起きてこない。
いちおう二人きりだ。
これも、いいかもしれない。
今月は、カフェに行くのはやめよう。今月のメオトカフェは、いつものこの食卓で。
「いただきます」
甘さがちょうどよく、おいしい。
サンデーモーニングを見ながら、ふたり並んでモーニング。
日々の食事を延々作り続ける主婦にとって、人に作ってもらったものを食べることは、この上ない癒しだ。
今月は、出かける機会は何度かあったのだけど、カフェには立ち寄れなかった。
開く時間がないでもなかったけれど、ブログを読むことも、書くこともできなかった。
庭も一番いい時期だけれど、草花を見て回ることも、できなかった。
仕事と家事、子育てだけは休めるものでもないので粛々とやった。
ワタシは、疲れている。
これは5月病?
更年期?
軽いうつとか?
なんだかわからないけれど、いろんなことに気が向かなかった。
**************
梅雨入り前の、最後の晴れ間。
大きな洗濯をして、寝具を干した。
いい匂いがした。
おひさまの匂いを嗅いでゴロンと横になると、なんだか少し解放された気分になった。
ただただ、気持ちいい。
ああワタシ、インとアウトのバランスが崩れていたのかもしれない!
ふと、そんな風に思った。
思えばこの2か月、母として「やらなければならないこと」がたくさんあった。それはまだ終わりそうにもない。
エネルギーを使うばっかりで、入れてなかったのでは?
**************
天気がいい休日はあれもこれも洗いたくなって、夕方にはヘトヘトになってしまうことも多いのだけど、今日はここまででやめておこう。
夕飯は具だくさんのスープにすれば、おかずは少しでいい。
とりあえず今は、「あれしなきゃ、これしなきゃ」からできるだけ自分を解放してみよう。
今日やらなくていいことは、気が向かなければ、また今度。
どうして気が向かないのかなんて、考えなくていい。
うちカフェは、体が教えてくれた「今月のカフェ」だったのかもしれない。
今は気の向くままに、このままちょっとだけ…昼寝しようかな。
エネルギーをINするために。
第16回 【女王様?のランチカフェ】凸凹だから上手くいく
誕生月だ。
今月は先月に次ぐ贅沢カフェ。
静かな住宅街の中でひときわ賑わうこのカフェは、もとは八百屋さんらしい。
野菜や果物がふんだんに使われたメニューの中からワタシが選んだのは、
アボカドのクリームパスタ。
アボカド大好き。
アボカドは年中スーパーで手に入るけど…最近このメニューが登場したということは、今が旬なのかしら?
オットは迷いに迷って、デリランチ。かぼちゃのスープ付き。
もちろん野菜たっぷり、栄養満点のボリーュム満点。
そしてこのランチの他に…
八百屋さんならではのフルーツジュースと
ミニパフェ(誕生日だから、どさくさに紛れて…)つき。
高台にあるカフェの一面ガラス張りの窓からは、下に続く住宅街が見渡せる。
海が見えるでも山が見えるでも、森があるでもない。
なんてことない営みの景色。
だけど、最高だ。
天気がよくて、美味しくて、見晴らしがいい、ただそれだけで。
さほど会話がなくても。
今日のデートプランを立て、このお店を探したのが自分自身だったとしても。
すごいスピードでパフェを平らげた目の前のこのヒトは、妻のためにお店をリサーチすることも、デートプランを練ることもしない。
これまでもなかったし、これからもないだろう。
サプライズなんて、もちろん一度もない。
少し前までは、不満やら疑問やらフツフツとしたものがあったが、やっとわかってきた。
このヒトにはそういう力があまり備わっていないのだ。
リサーチや準備、計画と言うものをまるでしない。年中無休でノープラン。
一方、ワタシはと言えば、この日出かけるとなったら調べまくり、天候や気温、体調、花粉の飛散具合にまで気を配り、数種類のプランを用意する。
たまの休みにせっかく出かけるなら、その時を楽しみたいと思うのだ。
正反対の2人。
どちらがいいとか悪いとかでなく、これはきっと“そなわり”なのだと気付いたのは、つい最近だ。
そう思ったら、オットが何も用意してくれないことに腹正しさも寂しさも感じなくなった。
いや、穴だらけの、意にそぐわないプランを出されたら、ワタシの性分からしてむしろイラっとするのではなかろうか。
ワタシが計画を立て、オットは黙って乗っかる。
デートは男性がリードするもの、誕生日は祝う側がもてなすもの、というような概念を取っ払えばいいだけだ。
結果、ワタシは思いが叶って満足し、オットはワタシに付き添うだけで新たな体験ができる。
傍目にはわがまま妻が気弱なオットを振り回しているかのように見えるかもしれないけれど…違うんですのよ。
互いの凸凹が埋まり、ワタシ達にはきっとこれがベストなデートのあり方…のはずなのだ。