メオトカフェ

中年倦怠期夫婦の「カフェ道」

第18回 【ゲストハウスのカフェ】 ヒトの五感で確かめる

自然には絶対通らないだろうな…という場所に、そのカフェはあった。

文明の利器によって、たどり着くことができた。

 

古民家を改装したゲストハウスだというその大きな家は、玄関が開け放たれているが人の気配はない。

勝手に入っていいのかしら?

「…おじゃましまーす…」

土間で靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、奥へと進んだ。

 

ソロリソロリと食堂らしきところへ入ると、マスターと思われる人の姿があった。

「カフェ(ですよね?)、いいですか?」

「ああ、どうぞ、どうぞ」

大きな部屋の木材は黒光りしており、改装で大きく窓がとられ、暗さと明るさのバランスが絶妙だ。

 

先客たちから少し離れた、窓際のカウンター席に座った。

 

「すみません、今日はお飲み物だけなんですが、よろしいですか?」

マスターがメニューを持ってきてくれた。

 

本業が忙しくてお菓子、焼けなかったのかな?

理由はわからないけどそのユルさ、今日のコンデションなら受け入れられマス。

最近飲み物よりもサイドメニューに目が行きがちだったのと、夫婦で体重が増加中なことを反省中でもあったのだ。

今日は久々に、飲むだけで。

 

エスプレッソラテと、ラテマキアートを注文した。

正直、どっちがどっちかわからない2人…。

 

夫婦二人のカフェ巡りも18回目だというのに、いっこうにコーヒーの知識が向上していない。

 

でも考えてみると、どちらかがどちらかにウンチクを語ったり、ともに熱心に学ぼうともしなかったから、カフェ巡りを楽しく続けてこられたのかもしれない。

いつ、どの時のコーヒーも、何の前置きもなく、新鮮だ。

 

カフェはいつも神経を研ぎ澄ませてコーヒーを飲む場所、というわけではないだろう。

ワタシにとっては、目で楽しめて、美味しくて、居心地いい…ただそんな場所なのだ。

お店の内装・雰囲気、窓から見える景色、聞こえる音…そんなものに癒されながら甘く美味しいものをいただく(やはり食べたい)。

話しても話さなくても、本を読んでも居眠りしても、人間観察をしてもただボーっとしても、過ごし方は自由(声が大きいのはお断りだけど)。

そんな時間をつかず離れずの距離感で共有して、そこにコーヒーの香りがしたら、、、最高だ。

 

 

先客たちが去っていき、カフェにはワタシ達二人だけになった。

ポツリポツリと会話を交わし、時々コーヒーを啜った。

窓の外を猫が歩いていく。

 

ワタシ達は検索機能とナビゲーションシステムによって、連れてこられたのかもしれないけれど。

 

この場所が“肌に馴染む”かどうかを確かめる自由が、ここにある。