第10回 【旅するカフェ】日本の街角で台湾茶
10月。
“メオト“カフェ巡りの第10回目は、台湾の香り漂うカフェへ。
もちろん日本の、街角にある小さなお店だが、足を踏み入れると異国感がほんのりと漂っている。
ご主人が旅する時に使われているのであろう、年季の入ったトランクやカメラ、外国のコインなどが無造作に置かれている。
ところどころ傷みもみえるアンティークな佇まいの椅子とテーブル、傍らには多種多様、無国籍な本の棚。ワタシが好きなカフェ本も多く、つい手にとってしまう。
コーヒーもあるが、せっかくだから台湾茶をいただくことにした。
オットは金萱茶。
半発酵の烏龍茶で台湾定番のお茶だそう。バターのような?濃厚な香りがするのに、味はとってもさっぱり。不思議な現象だ。
ワタシは蜜香紅茶。
渋みがなく、飲みやすい。
おちょこくらいの小さなグラスに少しずつ注ぎながらいただく。
温かいお茶が体中に巡っていくよう。あったまる~
温かい豆花(ドウホワ/トウファなどと読むらしい)は、さっぱりした優しい甘さで美味しい。
ツルッとした豆花を、ハト麦、豆、タピオカ団子などのトッピングが引き立てていて、食感も楽しい。
お茶はお湯を足していただいて、2煎目に突入。
本を眺めたり、店内の雑貨を見せてもらったりしばがら、チビチビ、チビチビ、お茶を楽しむ。
いい時間だ。
「ありがたいよね、日本にいて台湾の味楽しませてもらって。」
オットはフフッと笑って頷いた。
終盤、他のお客さんにつられて、ワタシ達も台湾カステラをひとつ、追加注文した。オットが食べたことないと言ったから。
甘いものが大好きなオットは「フムフム、そういうことか」と頷きながら、ほとんど一人で平らげた。
オットは新しい物を開拓するクワも持たないし、流行り物へのアンテナも折れている。この人はワタシがこうして機会を提供しなければ、一生同じ場所で同じものだけを食べて過ごすのではないだろうかと、時々心配になる。
帰り道、「知らないことっていっぱいあるな」とオットがつぶやいた。
そうでしょう?
世界を旅するまでいかなくても、こうしてそっと、新しい世界に触れることはいくらだってできる。
素適なカフェだったな。
ワタシもオットも、どちらかといえば保守的で、好んで知らない世界に足を踏み入れたりしない。「生まれ育った街が、日本が一番だよね(ラクだよね)」という感覚だ。旅行は好きだけど、世界を飛び回って生活するようなことは、今後もきっとないと思う。けれど、すこし、知りたい。そんな欲はある。
知らない世界を知れば、自分の世界が広がることは間違いない。世界中を旅した“彼”と台湾からやってきた“彼女”のオーナーカップルが営むこのカフェは、保守的でちょっぴり小心者なワタシ達夫婦にも、新しい世界を垣間見せてくれた。
本当は、入るのに少し勇気が必要だったのだけど…それは扉1枚だけの隔たりで、足を踏み入れてみれば、とても居心地の良い場所だった。