【夏、さいはてのカフェ】三年ぶりのミニ旅
子供たちは夏休みに入った。
去年と、その前の夏休み、いったい何をして過ごしたのか思い出せない。
フル自粛モードだったのだ、仕方ないけれど。
たかが三年、されど三年。
三年の間に子供たちはサイズを含め別人のように成長し、ワタシ達夫婦は退化(老化)が進んだ。
このままではいけない。
子供はやがて巣立っていく。
ワタシ達もいつまで元気でいられるか、不安がよぎるお年頃になった。
いつでも、いつまでも家族で出かけられるわけではないのだ。
昔「ものより思い出」というキャッチコピーの車のCMがあったが、それを痛感するこの頃。“家族のカタチが変わる”時は、もうすぐそこまで来ている。
幸い週末は晴れ予報。
コロナは第7波真っただ中。ガソリン価格も高騰し遠出のハードルは高いが、思い立ったが吉日。オットの賛成も得て、すぐに発つことになった。
さっそく家族の希望を聞き取ると…
オット:「海。とにかく海」
長男:「遠く。海鮮(浜焼き)食べたい」
次男:「プール!」
ワタシ:「海が見える素敵カフェ」
我が家の男性陣は、基本、これ以上のことを考えない「ノープランライフ」な人たちなので、ここから先、プランをつくるのはいつもワタシだ。
久々に超高速で頭を回転させ、即興プランを作り上げた。
早朝に発ち、人混みを避けて朝の海水浴へ(海・プール、スミ)
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海を眺める食堂で、早めの時間に浜焼きランチ(海鮮・浜焼き、スミ)
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早々に退散し、海沿いをドライブ(海、追加)
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さいはての海辺カフェで休憩(カフェ、遠く、とにかく海、スミ)
節約と、感染予防のため、今回は宿泊無しの日帰り日程。
走行距離はかなり長いが、オットよ、頑張れ。(何のプランも提案せず、準備もしないので、運転好きではないがいつも運転手を務めるはめに…)
「ぜったいに感染せず帰ってくるよ!」と高らかに宣言し、出発した。
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朝の海はすいていた。
オットと息子たちが海に入り遊んでいるのを、ワタシは砂浜から眺めていた。
小学校入学前、水に顔をつけることすらできなかった長男は、スイミングスクールに入れられても1年近く進級できなかった。やめたくてやめたくて、泣いては通った道。泳ぎ始めたらスイスイと、四泳法をマスターした。コロナ自粛の間に、声が変わり、父親の背丈を抜いた。
超ド急に運動ができない次男は、幼少期から海もプールも異常に怖がった。抱いて入ろうものなら、虐待の通報をされるのでは、というほど泣いた。彼にとって、海は砂いじりをするだけの場所だった。今年、3年ぶりのプールの授業のあと、プールに行きたいと言い出した。初めて、自ら海に入った。
まるで浦島太郎のように、ひとり浜辺で子供たちを眺めていた。
3年という月日が長かったのか、短かったのか、よくわからない。
でも“空白の3年”ではなかったのだと、それだけはわかった気がした。
浜焼きを楽しみ、海水浴場を後にした。
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食後は海沿いをドライブ。
暑かったけど、海がとてもキレイで、ところどころの立ち寄りスポットに律儀に停車。気付けば、お目当てのカフェの閉店まで1時間を切っていた。
さいはてのカフェだぞ。間に合う??
遠路はるばるやってきて、こんなに海がキレイなのに、タッチの差で閉店とかないよね?
いつもならちょっとイラつくワタシだけど、この日は違った。
またいつか来たいと思える素敵なドライブウェイ、
「間に合わなかったら、今回は縁がなかったとあきらめるよ。またいつかリベンジすればいいし。」
と大人の対応。
オットが何を思ったかはわからない。
“なんとか間に合わせて、妻にカフェを”なのか、
“ここまで運転させられて、また来るのはキツイ”なのか…
そこからは海に脇目も振らず、休憩もせず車を走らせ、間に合わせてくれた。
途中、こんなところにカフェなんてあるの?とちょっと不安になったけれど、海岸へと続く坂道を下っていくと、見えた!
遠かった…。
時間内に着いただけでも、嬉しい。
カフェはおしゃれで、こじんまりした海の家、という感じ。
お目にかかれて光栄です。
海はすぐそこ。
説明はいらないと思う…
アイスカフェオレとスコーンをいただいた。
オットのチーズケーキ(夏バージョン)も、どっちも美味しい。
次男は、リンゴジュースをがぶ飲み(暑かったもんね…)。
長男は、なぜか最近はまっているグラノーラ&ヨーグルトを注文。美味しい、美味しいと味わっていた。(手作りのグラノーラ、スーパーのとは全然違うらしい)
日帰りなので、帰りは さいはての地から、一気に帰宅。オットはヨレヨレになっていた。
帰ってからは、あまりに違う環境に、今日、本当にあんな素敵な場所にいたのかな~?と半信半疑の夢見心地状態。
今年の夏のミニ旅は忘れることはないだろうと思う。
ジリジリする暑さ、蝉の声、潮の香り、きらきら光る水面、子供たちの歓声、浜焼きの匂い、カフェの空気、長旅に痛くなるお尻…
五感で感じたものがしみ込んで、確かな思い出になっていく気がした。
出かけてよかった。
長男は、カフェでお土産に購入してきたグラノーラをちびちび食べ、3年ぶりの夏旅の余韻に浸っている。
3年前、この子がグラノーラをこんなにも愛することになるとは、思ってもみなかった。未来は誰にもわからないのだ。