メオトカフェ

中年倦怠期夫婦の「カフェ道」

第1回 【古い町並みの中にある古民家カフェ】  メロンパンが食べたい。

1月上旬のある休日、オットとカフェに出かけた。

 

よくあることではなく、どっぷり中年となった私たち夫婦にとって、極めて稀なことである。

 

子育ても後半戦に入り、なんとなく、しっくりいかなくなったと感じる二人の関係。

大きなケンカをするわけでもなく、いがみ合っているわけでもなく、仲がいいか悪いかと聞かれれば良い方ではあると思う。

お互いに、家族としての多少の依存や束縛はあるかもしれないが、関係はどちらかといえばドライ。

仕事も家事も子育ても、配分は違うものの二人でシェアして家庭を守ってきた。

平凡な、いい夫婦なのかもしれない。

 

でもなんだかしっくりしないのだ。

 

このままでもいられないことはないが、いずれダメになるかもしれない。

そんな気がしていた。

 

そこで年頭にあたり、一つの企画を提案した。

「一か月に一度、二人でカフェに出かけない?」

 

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二人でわざわざカフェに出かけるなんて、稀どころか独身時代ぶりかもしれない。

第1回目は、車で30分ほどの街の中にある、古民家カフェを訪れた。

 

駐車場から凍てつく静かな雪道を二人で歩く。

二人とも雪国出身なので転んだりはしないが、適度な緊張感で、会話がないのも気にならない。

 

到着すると入り口には「メロンパンは完売しました」の札。

手作りのメロンパンが評判とのことなのに残念、出遅れてしまった、、、

数量限定。予約しておけばよかったな。

 

オットはホットコーヒー、ワタシはカフェオレ(ラテ)が定番。

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思ったより泡多めのカプチーノ風?不慣れなため扱いに手こずり、大量にカップに残ってしまう。そのうちスマートな飲み方を覚えよう…。

 

メオトカフェと題しておきながら、私たち夫婦はコーヒーのことは全く詳しくないし、味の違いにも鈍感だ。

 

でも感じたことは伝えたい。

ケーキも飲み物も、美味しかった。

 

二人で(メロンパンの代わりに)ひとつだけしか注文しなかったケーキに、さりげなくフォークを二本添えてくださったお店の方の心遣いや、古い佇まいの店内に静かに流れるジャズ(音楽も詳しくない)、反りのある重厚な一枚板のテーブルとアンティークの家具…雰囲気の後押しもあって、大満足。

 

奥には座敷席と中庭(裏庭?)。

ばあちゃんの家、こんな風だったな…

縁側の先の小さな庭で、過ごした時間を思い出す。

 

すぐそばには暖かい石油式ストーブ。

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灯油の管理が面倒で、電化してしまった我が家の暖房。

 

非常時の備えとしてもいいよね、と話には出るものの夫婦揃ってめんどくさがりで、一向に状況は変わらず…。

 

素敵だなあ。今、暖炉並みの存在感で燃えている(ように感じる)。

 

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この「カフェ巡り」には事前に二つ、オットにミッションを課していた。

一つ目は、いつもの服を着ない(いつも同じ服を着るオット…)

二つ目は、面白い話をひとつ用意する(いつもほぼ無言のオット…)

 

一つ目のミッションはワタシが選んだ服を黙って着ることで、難なくクリア(素直なのはいいところ)。

二つ目。とりあえず、ここまでほぼ無言。こんなに素敵な店なのに、カメラに保存された過去写真になぜか今、夢中。

「すごいなあ、鼻水まで写るとは」

 

 

まるでオットがちょっとした病気持ちかのように思われるかもしれないが、たぶんそういうことではない。

 

よりよく過ごす、生きる、という分野にオットは力を入れないのだ。それはそれで一つの生き方かもしれないが、何においても「楽しむ」ということをせず、人生には苦行しかないかのように語り、その空気を家庭に浸透させるのが、ずっとずっとワタシには残念でならなかった。

 

仕事も家事もちゃんとやってくれる彼なのだけど(それも苦行の1つ)。

 

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この企画の提案に、オットは二つ返事で乗ってくれた(素直なのはいいところ)。

 

いつもカフェでお茶できるほど余裕はないので、月に一度だけ。

二人でカフェに出かけよう。

もったいないからコンビニの100円コーヒーでいいとか言わずに。

いつもより少しだけいい服を着て。

面白い話をひとつだけ用意して。

 

第1回目、面白い話は特になかったけれど、「忘れちゃうから、ノートか何かに書いておくといいな」とオットが珍しく、今日の出来事を“よりよく”記憶するための提案をした。

 

もちろんそのつもり。ノートじゃないけどね。

 

こうして始まった「カフェ道」

二人の道は続いていくだろうか。

 

続いていたら、またいつか二人で訪れたい。

オットが好きな、メロンパンをいただくために。