メオトカフェ

中年倦怠期夫婦の「カフェ道」

2022年 お勧めしたい「カフェ本」

カフェに行くのは基本的に月に一度と決めている。

 

コロナのことや、節約の意味も大きいけれど、いつでもどこでも車移動の田舎暮らしでは、基本的にお店で休憩や時間潰しをする習慣があまりないのも大きい。

カフェでお茶するということは、田舎で暮らす多くの人々にとって、“ほどほどに特別な“ことなのではないかと思う。

 

お店に行けない日々は、家でコーヒーやお茶を飲みながら、カフェに関する本や雑誌のページをめくり、妄想カフェを楽しんでいる。

 

そこで今日は、今年読んだカフェ本の中で、特に好きだった三冊をご紹介したい。

 

 

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ときどき旅に出るカフェ

ミステリ作家としても知られる小説家・近藤史恵さんの連作短編集。

サラサラと、流れるように読みやすいので、いつの間にか自分が物語の舞台である「カフェ・ルーズ」に長居しているような錯覚に陥ってしまう。

 

平凡なOL瑛子が近所にみつけた素敵なカフェの店主・円は偶然にも瑛子のかつての同僚(後輩)。円が海外などの旅先で見つけたものを再現した、耳慣れない素敵な飲み物やお菓子とともに、日常の小さなミステリの絡まった糸が静かにほどけていく…そんなお話だ。

仕事は安定し気ままな生活をしているが、お局様と言われる年齢にさしかかり、将来への漠然とした不安を抱える独身OL・瑛子と、OL時代は印象に残らないほどおとなしい存在だったのに、たくましく店を切り盛りする店主・円。

同僚時代に深い関りはなく、異なる人生を送っていた二人が、「カフェ・ルーズ」で再会し、カフェでの出来事や時間を共有しながら、「かつての同僚」「店主と客」という立場から「大切な人」になっていく。「カフェ」という場所、空間の持つものにどこか似ている二人の関係。二人の間にはいつも程よい距離感と思いやりがある。

 

カフェで提供される世界各国のお菓子や飲み物は、物語を邪魔しないように、世界は自分が思っているよりずっと広くて多様な価値観があること、何ごとも自分で試してみなければわからないこと…いろんなことを教えてくれる。

スイーツ好きな方や、お家でカフェ気分の休日のお供におすすめしたい本だ。

 

マカン・マラン -二十三時の夜食カフェ

作家の古内一絵さんの作品。全4巻。

4冊もあっても、きっと夢中で一気に読んでしまいたくなる。

1冊につき4つのストーリーが入っており、それぞれのストーリーに主人公がいる。それは家業を捨てた漫画家アシスタントだったり、母親の料理を食べなくなった男子中学生だったり、発育に心配がある子を持つ母親だったり、早期退職の候補になったキャリアウーマンだったり…。

一見自分の境遇はそのどれにも当てはまらないようでいて、それぞれの主人公と自分の重なる部分を感じてしまう不思議。「自分とは違う誰か」の物語のはずなのに、そのどれもに共感してしまう。

深夜営業の夜食カフェ「マカン・マラン」の店主であるドラァグクイーンのシャールが、悩み、傷ついた主人公(お客)たちに手作り料理と共にそっとかける言葉は、いつのまにか自分に向けられた言葉となって、胸に染みる。

カタチは違えど、人を苦しめるのは「虚しさ」なのかもしれない。

カフェで過ごす客たちはシャールの料理と言葉に癒され、自分の力でまた前に進み始める。虚しさで空っぽになった心に、たっぷりの栄養を注いでもらって。

一日の終わり、ベッドの中での読書などにおすすめだ。

 

喫茶人かく語りき -言葉で旅する喫茶店

ライターであり、喫茶写真家でもある川口葉子さんの著書。

装丁からして、喫茶店の重厚な扉を開けたような気分になる。カフェ・喫茶店のオーナーたちの名言集は読み応えたっぷりで、店の空気感を写し取ったような写真の数々にも見入ってしまう。とても美しい本だ。

カフェとは、喫茶店とは、コーヒーとは…各人の答えは本の雰囲気同様重厚で、十人十色なようでいて、共通点があるようにも思えてくる。

カフェに求めるものは人それぞれだろうが、自分も含めカフェでの時間を過ごす人は皆、「小さな救い」を求めているのかもしれない。コーヒーや場所を提供する側の彼らもまた、もしかしたらカフェ、喫茶店、コーヒーに救われた経験のある人たちなのではないか…そんなことを思ったりした。

コーヒーだけでなく、カフェ・喫茶店という場所が好きな方におすすめの本だ。

 

 

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いずれもカフェにいるような気分になれる、素敵な3冊。

年末・年始、少し時間ができた時に…コーヒー片手に妄想カフェ、ご一緒にいかがですか?