桜と団子と駅と
春休み。
久々に家族の予定が合い、目的があって都会に出かけた。
暖かく天気の良い行楽日和。
目的地へのドライブは快調だった。
「あっ!降りて!!」
ワタシの叫び声に、オットは慌てて進路を変えた。
高速道路から見下ろした小さな町が、満開の桜で彩られているのが見えたのだ。
急遽、最寄りののインターで降りることにした。
桜が満開の休日だというのに、町は静かだった。
「お腹減ったよう」
という次男のお腹をまず満たすため、先にお団子屋さんに立ち寄った。
お団子2本と飲み物のセットを注文。
4人分だとこうなる。
美味しそうすぎる。
今は花よりも、この団子の列を眺めていたい。
…と思ったのも束の間、お団子たちは散り散りになり、ハイエナたちの胃袋へ。
焦げた醤油の香りが漂うこのお団子屋さんは、社会福祉法人が運営されている多機能型事業所なのだ。
障がいを持つ人が働いたり過ごしたりする場があって、そこには地域のひとや私たちのような通りすがりの観光客も立ち寄る。
「ごちゃまぜ」の感じ、とてもいい。
ここはきっといい町に違いない。
心も胃袋も満たされた後は、いよいよ桜並木へ!…のはずが、「駅」の看板を見つけ、また寄り道。
せっかくだから寄ってみようということに。
無人駅だ。
だ~れもおらず、駅一人占め(四人だけど)。
長男は鉄オタではないのだけど、駅が好きなのである。
旅立ちの、または次の目的地に移動するときの、ワクワク感がいいんだそうだ。
幼い頃から毎年一度、我慢ばかりの小さなお兄ちゃんと二人旅に出かけた。
この時ばかりは弟がおらず、母を独り占めできるとあって、出発の時はいつもよだれが出そうなほどニヤケきった顔をしていたっけ。
その頃の記憶が、彼の駅好きに影響しているのかどうかわからないけれど、そうならいいと思っている。
コロナが明けて、そろそろ旅に出れるかな?というころには、息子はすっかり大きくなり、もうお金を払っても二人旅なんてしてくれない年頃になった。コロナで失ってしまった時間は、確かにある。
この春休み、息子が友と旅に出るのを見送った。
数年後の春、駅で見送るのは巣立っていく息子かもしれない。
この季節、たくさんの親御さんが我が子の背中を見送ったのであろう。
もう少し先のことだけど、なんだかしんみりしてしまう。
その時。幼い彼と立った駅のホームではなくなるのだ…。
春は、嬉しくも切ない。
桜満開の小さな町をあとにして、私たちは目的地へと向かった。