メオトカフェ

中年倦怠期夫婦の「カフェ道」

第14回 【駆け抜ける古民家カフェ】 できることなら、ゆっくりと

学ばねばならないことがあって、夫婦二人で市民会館に出かけた帰り道。

バレンタインも近いし、甘いものでもどうですか?ということで、オットを今月のカフェに誘った。

イベントごとだし、少しかしこまってホテル内のカフェなんかもいいかもしれないと、会場近くのホテルに向かった。

 

数年ぶりに訪れたそのホテルは、コロナ禍の間にフロントの位置が変わるくらいの大改装がされていて、お目当てのカフェは消えていた…

 

さて、困ったぞ。代替案を考えていなかった。しかも次男のお迎えの都合もあり、時間がない。

ホテルを出て、車をウロウロ走らせた。

せっかくの月イチカフェの時間なのにな…。

予定が狂ったことと、お迎え時間が迫っていることでワタシは少しイライラしていた。正直に言えば小腹もすいていた。

 

「あ!あそこは?」

「あそこだろ?オレもそこにしようかと思ってた」

 

さすが、夫婦。あうんの呼吸だ。(あるいはオットは適当に話を合わせて相槌を打ったのかも知れないが…それも含めてあうんの呼吸と言える)

 

 

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雑誌などでも見かけるその店は、観光客が行くところというイメージもあり、二人とも訪れたことがなかった。

建物は築100年、明治時代の町屋である。

「どうぞこちらへ」と声を掛けられ、靴を脱いで上がった。

 

客席はぐるりと中庭を囲んでおり、回廊が各部屋を繋いでいる。

庭を挟んだ向こう側の席の様子はうまい具合に木々で遮られ、お客どうし目が合うことはない。

これは、いい。

なんだかとても、いい。

視界が開けているのに他人の視線からは遮られ、人の気配はあるのにプライベート空間が保たれる…そんな場所がワタシは好きだ。

 

「バレンタインだからごちそうします。なんでもいいよ」というと。

オットは「腹減ったな…マルゲリータと…、甘いものも食べたいな。パフェにするか、パンケーキにするか…」

(えっ、夕飯間近なのに、時間もないのに、そんなに頼むの?)

驚きながらも、今、主役はオットである。自分の空腹も否定できず…思い切って注文することに。

 

定番のカフェオレに

 

マルゲリータ

 

米粉のクレープ(チョコバナナ)

 

この環境、雰囲気だったら、ゆっくりゆっくり味わいたいところだけど…

とにかく時間がない。

そして腹ペコだ。

 

隣の席のカップルがひく気配を感じるくらい、ワタシ達は目の前のものをガツガツと平らげた。

おいしい。おいしいです…!

そして雰囲気も最高です…!

なのにバチ当たりなこの食い散らかし様をお許しください。

必ずや、また来ます。今度は時間の余裕を持って。

 

素敵な空間、美味しいものにお腹も心も満たされ、イライラは木っ端みじんに吹っ飛んでしまった。

恐るべし、素敵カフェ。

 

とにかく全てを胃袋に納めると、後ろ髪引かれながらカフェを後にした。

 

 

 

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その後は猛スピードで次男のお迎えに向かい、無事回収。

車の中で「今日の夕ご飯、なあに?」という問いにハッとした。

 

留守番中の長男に、「夜はお好み焼きパーティーしよう」と言い残してきたのだった。

楽しみにしているだろう。

腹を空かせて待っているであろう。

今さら変更はできない。

 

花より団子。

腹ペコ男子には素敵空間とおしゃれメニューより、ソースの匂いに包まれた、あの塊だ。

粉ものたくさん食べたけど、やるか、お好みパーティー

空腹とテスト勉強のイライラにさらされている男子のために。

 

 

2時間後。

「腹いっぱいでオレは食べれないよ」と言っていたオットは、長男とともに7枚目のソースの塊をつついていた。

できる男なのである。

なんなら成長期の息子以上に、食べることができる。

 

今や、中年太り街道まっしぐら。

あんなに締まったお腹、してたのになあ…(人のことは言えないけど)

 

なんにせよ、美味しいものを誰かと一緒に食べるって幸せだ。

幸せ太りということに、しておこう。

 

お好みパーティーは3時間に及んだ。

こういう時間はできればゆっくりと…大切に過ごしたいものだ。